ジョン・ディクスン・カー『三つの棺』ほか

今回は、雪が降る時期にぴったりな内容のミステリー作品をご紹介します。

ジョン・ディクスン・カー『三つの棺』

あらすじ

2つの不可解な事件の発端は、謎の奇術師フレイの出現だった。

現場の1つであるグリモー教授宅では、犯人の足跡が雪上に残っていなかった。
カリオストロ通りの事件では、銃声が聞こえたのみで犯人の姿を見た者はいなかった。

姿なき殺人者の正体とはいったい?

フェル博士の密室講義

われわれ三人は生き埋めにされたことがある。逃げたのはひとりだけだった

このフレイの発言がたとえ話ではなく事実であったと、誰が想像できたでしょう? グリモー教授の過去が判明したあたりから、ぐいぐい物語に引き込まれていきました。

本筋が面白いのはもちろんのこと、かの有名な「密室講義」も登場するため、ミステリー好きにとっては要チェックの作品です。

フェル博士は多様な密室のパターンを挙げていますが、本作のトリックは合わせ技のような感じがしますね。

アガサ・クリスティー『オリエント急行の殺人』

あらすじ

大雪で立ち往生したオリエント急行内で、何者かに襲われた老富豪。偶然乗り合わせた名探偵、エルキュール・ポアロは事件の調査を開始するが……。

ネタバレされる前に読みたい古典ミステリー

真冬のヨーロッパを走る豪華寝台列車、という舞台に惹かれるミステリー。

本作に加え、『そして誰もいなくなった』『アクロイド殺し』あたりは、ネタバレを目にする機会が多いクリスティー作品トップ3かもしれません。個人的意見ですが、特に本作『オリエント急行の殺人』は危険大です。ミステリー初心者の方は、余計な情報を仕入れたりはせず、可及的速やかに本文に取りかかるようにしましょう。

西村京太郎『殺しの双曲線』

あらすじ

6人の男女に届いたのは、差出人不明の招待状であった。東北地方の雪深い山荘に集められた彼らは、逃げ場のない状況で事件に遭遇することに。

一方、都内では立て続けに強盗事件が発生。しかし、ある事情により警察は容疑者逮捕に踏み切れず……。

おなじみ〇〇トリック

十津川警部シリーズや鉄道ミステリーのイメージが強い西村京太郎氏。当たり前ですが、当該シリーズ以外の作品も書いています。

特筆すべきは、「この推理小説のメイントリックは、双生児であることを利用したもの」である、と冒頭で明言している点。『三つの棺』同様、こちらも2つの事件が交錯する様が魅力のひとつです。

また、クローズドサークルの要素があり、クリスティーの『そして誰もいなくなった』を既読の方であれば、そのオマージュとして楽しむことができます。

犯人に独善的な面が見られるところも『そして~』と共通しています。ただ、犯人の最終的な処遇はずいぶん異なっており、本作の場合、刑事による痛烈な犯人批判で幕を下ろすのが印象的でした。

東野圭吾『ある閉ざされた雪の山荘で』

あらすじ

オーディションに合格し、稽古のためにペンションに集まった男女7名。今回の舞台は殺人劇である。

メンバーが1人また1人と行方をくらましていく中、本当に事件が起きているのではないか?と「生存者」は疑念を強めるが……。

変化球型・吹雪の山荘もの

吹雪の山荘もの、というのは舞台上の「設定」。現実はどうかと言えば、早春で特に天候不良もなく、逃げようと思えばいくらでも逃げられる状況です。

ただし本作では、悪天候に代わる別のハードルが用意されています。それは、逃げ出すと役から降ろされてしまう、ということ。俳優たちにとっては死活問題ですね。

よって、物理的には何の支障もなくても、心理的には場に留まらざるを得ません。この点が本作のストーリーの妙と言えるでしょう。

メイントリックに関する描写については、序盤からひっかかりを覚えていたものの、違和感の正体はつかめずじまいでした。まさかあのような展開が待ち受けていようとは、夢にも思わず……。このオチに対しては賛否両論あるようですが、私はあり派です。

シナリオ・我孫子武丸『かまいたちの夜』

あらすじ

スキー旅行でペンション・シュプールを訪れた透と真理。楽しいひと時も束の間、異様な手紙が発見されたことで、宿泊客の間に不穏な空気が漂い始める。

「こんや、12じ、だれかがしぬ」

その後、猛吹雪により陸の孤島と化したペンションで、透たちは凄惨な事件に巻き込まれていく……。

ジャンルを確立した名作ゲーム

当初スーパーファミコンで発売された『かまいたちの夜』。サウンドノベルというジャンルを確立した、と言われるほどの名作ゲームです。

シナリオを担当しているのは、『殺戮にいたる病』などで知られるミステリー作家、我孫子武丸(あびこたけまる)氏ですが、もしも本作が小説という媒体で発表されていたなら、ここまで人気になることはなかったかもしれません。

選択肢を熟考し、何度も失敗を繰り返し、手探りで事件を解決に導いていく。そうした独自のプレイ体験が得られる点こそが、本作最大の魅力であるからです。さらに、メインストーリーであるミステリー以外にも、オカルトにコメディと、多彩なルートを楽しめるので、プレイヤーを最後まで飽きさせません。

リメイク版について

2017年発売のリメイク版『かまいたちの夜 輪廻彩声』は、キャラクターのグラフィックがシルエットからイラストに変わった点や、声がついた点などに特色があります。また、『ひぐらしのなく頃に』シリーズの竜騎士07氏が新規シナリオを担当したことでも注目を集めました。

※『輪廻彩声』は、CELO:Z(18歳以上対象)になっていますので、購入時は十分にご注意ください。

ちなみに、スーパーファミコン版や過去のPlayStation版(『かまいたちの夜 特別篇』等)については、ダウンロードでの購入も可能です。興味がある方は、公式サイトをチェックしてみてはいかがでしょうか。

おわりに

今回紹介したのはミステリーでしたが、ジャンルを問わず、季節に合った作品に触れるというのは、雰囲気が出てよいものです。

天気が悪い日、外出できない日も、おうち時間を上手に楽しみましょう。