『ブック・オブ・ライフ~マノロの数奇な冒険~』(原題:The Book of Life)は、2014年公開のアニメ映画。監督はメキシコのアニメーター、ホルヘ・グティエレス。製作には、『パンズ・ラビリンス』などで知られるギレルモ・デル・トロも関わっています。
本作は、日本では劇場公開されておらず、動画配信サービスやDVD等で視聴することができます。
あらすじ
博物館のガイドが語る昔々のお話──。
ある年の「死者の日」、死者の国の支配者ラ・ムエルテとシバルバは、仲良し三人組マノロ・ホアキン・マリアを見て賭けをした。マノロとホアキン、どちらが将来マリアと結婚するのか?
時は流れ、スペインへ留学していたマリアが町へ帰ってきた。再会を喜ぶのも束の間、マノロはシバルバの策略により死者の世界へ旅立つことに……。
メインキャラクター
マノロ・サンチェス
音楽家志望の心優しい若者。マリアから贈られたギターとメッセージを大切にしているが、家業である闘牛士の修業を続けざるを得ない状況にある。死者の国で先祖とともに大冒険を繰り広げる。
マリア・ポサダ
自由奔放な女性。ヨーロッパの先進的なものの見方を身につけており、地元の旧体依然とした文化には批判的。ブタのチューイをお供にしている。マノロをかばって蛇にかまれ、一時昏睡状態に陥るが……?
ホアキン・モンドラゴン
マノロの友人でありライバル。盗賊と戦って殉職した隊長の息子。シバルバから「永遠の命の勲章(メダル)」を授かり、無限の勇気と不死身の体を持つ戦士となった。住民から英雄視され、盗賊団退治を期待されている。
チャカール
町の人々を長年苦しめている盗賊団の首領。「永遠の命の勲章」を探している。
ラ・ムエルテ
明るくにぎやかな「思い出の国」の支配者。気の強い美女。勇敢なサンチェス家の面々を気に入っている。La Muerteはスペイン語で「死」を意味するほか、メキシコの聖人ないし女神であるサンタ・ムエルテを思わせる特徴もみられる。
シバルバ
暗くて寂しい「忘れ人の国」の支配者。賭けに勝って「思い出の国」を手に入れようと、卑怯な手段を使う。なお、マヤ神話にはXibalbaという名前の冥界が登場する。
キャンドルメーカー
「魂の洞窟」にいる秩序の神。「生命の書」を所持しており、命の象徴であるキャンドルを管理している。
内容紹介と感想
生命の書と死者の国
ガイドの女性は子どもたちに「生命(いのち)の書」という本を見せてくれました。彼女が言うには、世界は物語でできていて、「生命の書」にはその物語のすべてが収められているのだとか。
そして今回語られる物語は、宇宙の中心にあるメキシコの中心にあるという小さな町、サン・アンヘルでの出来事です。
博物館ガイドが人形を使って説明しているていなので、キャラクターデザインも人形風でユニーク。男性陣は肩幅があり、女性陣は大きな瞳が特徴的です。死者の顔のメイクもエキゾチックな雰囲気を漂わせています。
現世の町も洒落ていてすてきなのですが、冒険の舞台はなんといっても「思い出の国」が華やかで魅力にあふれています。DVDのパッケージなどを見てもわかるとおり、とにかくカラフルで楽しげです。私はそこに魅かれて視聴を決めました。
作中に登場する「思い出の国」と「忘れ人の国」は、メキシコの地下にあるといわれる死者の世界です。人々の記憶にあるうちは「思い出の国」でこの世同然に楽しく暮らすことができますが、忘れられた死者は「忘れ人の国」に行くことになります。
死者の日
10月末から11月頭にかけてメキシコなどで行われる祝祭「死者の日」(Día de Muertos / Day of the Dead)は、日本でいえばお盆にあたるでしょうか。ハロウィンとは起源が異なるものの、仮装をするといった共通点もあり、連続してイベントが開催されているケースもあるようです。
祖先の魂が帰ってくる日とされていたり、マリーゴールド等の花々でお墓を飾ったり、お供えをしたりする点などはお盆に似ていますが、雰囲気はまるで異なり、活気にあふれ、大いに盛り上がるんだそう。死生観の違いが出ているのかもしれません。
ちなみに、「魂の洞窟」でみられた、1本1本のキャンドルが人間の命を表しており死亡すると炎が消えるという設定は、日本の古典落語『死神』に通じるところがあるな、と思いました。
また作中、おばあさんに化けたラ・ムエルテにマノロがパンをわけてあげる場面がありますが、これは死者のパン「パン・デ・ムエルト」であると思われます。
こうした「死者の日」や先述の死者の国の様子は、2017年のディズニー/ピクサー作品『リメンバー・ミー』(原題:Coco)でもモチーフになっていましたね。
自分の物語を書くとき
ずっと抱えてきた恐怖に打ち克ったマノロは、再び現世に戻ってきました。
終盤の山場、盗賊団退治では、くしくも「死者の日」当日ということでご先祖様たちもそろって大活躍します。ご先祖様のなかでは、おちゃめな双子の姉妹やオペラ歌手志望だったというおじいさんが面白くてお気に入りです。
ストーリーの軸の一つに三角関係がありますが、マノロとホアキンの二人は張り合いこそすれ子どもの喧嘩のノリで、どろどろした重苦しさはありません。あくまで友人であることに変わりはないので、恋愛模様もさわやかに締めくくられます。
テンポの良さと全体的にコミカルな作風のおかげで、最後まで一気に見ることができました。ミュージカル要素もあり、とりわけ音楽・美術面で楽しめる作品に仕上がっています。