バークリー『毒入りチョコレート事件』ほか

今回は構成力が冴えわたるミステリーを3点紹介したいと思います。

アントニイ・バークリー『毒入りチョコレート事件』

毒入りチョコレートを使った事件をめぐるミステリー。犯罪研究会のメンバー6名が、異なるアプローチで異なる犯人の名を挙げ、推理を展開していきます。

複数の推理を構築した作者の力量に思わずうなってしまう、多重解決ものの古典的名作です。「よって犯人はオレ!」の流れにはつい笑ってしまいましたが。

その作風からアンチミステリーと呼ばれることもあるバークリーの小説。他作品『第二の銃声』や『ジャンピング・ジェニイ』などでは、探偵がかなり情けないことになっていたり。

少しひねくれた作風が好みの方におすすめです。

ビル・S・バリンジャー『歯と爪』

現在の時間軸では、使用人を手にかけた容疑で主人が裁判にかけられています。遺体が一部を残して消え去ったという不可解な事件です。

過去の時間軸では、マジシャンである主人公と妻との出会い、ほほえましい新婚生活、そこから一転して悲劇的な事件の発生、主人公による復讐物語が描かれます。

過去と現在を交互に描写し、徐々に事件の全体像が明らかになっていくという物語構成。発売当初の本は種明かしの部分が袋とじになっていたといいますから、なんとも挑戦的です。

魔術師としてのスキルをどのように使って復讐を果たすのか、という点に要注目。

あまりにも多くのものを失った主人公。ラストはやるせなさが残ります。

セバスチャン・ジャプリゾ『シンデレラの罠』

火事による後遺症で記憶を失ったヒロイン。火事が発生した夜は二人の女性がいっしょにいましたが、ヒロインにはそのどちらが自分であるかさえわからないのです。彼女は自身の過去を探り始めますが……。

1968年には映画公開もされました。二転三転して明かされる事実は衝撃の連続。ここでの主人公は、真相を追う探偵役であり、唯一の現場目撃者です。そして被害者、あるいは加害者なのか? 遺産相続をめぐる確執に収まらない、女性同士の奇妙で複雑な関係描写が印象的です。

どの作品もその優れた構成に舌を巻いてしまいます。一風変わったミステリーをお楽しみください。