『コララインとボタンの魔女』

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『コララインとボタンの魔女』(原題:Coraline)は、2009年公開のストップモーションアニメ。原作は、ニール・ゲイマン作の児童書で、ヒューゴー賞を受賞しています。

監督・脚本は、『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』でも監督を務めたヘンリー・セリック。制作会社は、その後『パラノーマン ブライス・ホローの謎』や『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』を世に送り出しているLAIKAです。

あらすじ

コララインは引っ越してきたばかり。まだ友人がいないうえに、両親も仕事で忙しく、毎日退屈で仕方ありません。

そんなある日、家の中で小さな扉を発見します。その向こうには、現実とはちょっと違う、不思議な世界が広がっていました。

異世界の方の両親や近所の住人はとても優しく、理想的な存在です。ただし、なぜかみんな目がボタンであることを除けば、ですが……。

メインキャラクター

コラライン
ピンクパレスに越してきた少女。活動的で物おじしない性格。名前をしょっちゅう「キャロライン」と間違われる。両親に対する不満が募る中、別世界につながる扉を見つけ、そちらでの生活を楽しむようになっていくが……。

ママ
園芸ライターだが、土いじりは苦手。多忙のため、気持ちに余裕がない様子。
「別のママ」はいつも上機嫌で、家族においしい料理をふるまっている。

パパ
常にパソコンに向かっており、顔色が悪い。一家の料理担当だが腕前は散々。
「別のパパ」は、陽気で歌が上手。美しい庭を案内してくれる。

黒猫
ワイビーとよく一緒にいる野良猫。ネズミが大嫌い。現実世界と別世界を行き来しており、「俺は俺」とのこと。別世界では人の言葉を話し、魔女のことにも詳しい。

ワイビー
家主の孫。何かとコララインにちょっかいをかけてくるおしゃべりな少年。
「別のワイビー」は、現実世界と違って大人しく無口(正確には口をきけなくされている)。映画オリジナルのキャラクター。

ボビンスキー
アパートの上の階に住む男。変わり者で、トビネズミの言葉がわかるらしい。
別世界では、トビネズミのサーカスを披露する。

エイプリルとミリアム
アパートの地下に住むおばあさんたち。元女優で占いが得意。
別世界では、すてきな姿に変身して素晴らしいショーを見せてくれる。

リトル・ミー
コララインそっくりの人形。祖母のトランクの中からワイビーが見つけた。

ボタンの魔女
別世界を牛耳る魔女。子どもの魂を食べることで生きながらえている。ルールは守らないが、ゲーム好き。猫は大嫌い。

内容紹介と感想

ヒロイン・コララインの冒険

ヒロインのコララインは、ブルーの髪にネイル、となかなかに個性的な外見です。パッケージから受ける印象では、なんだか意地の悪そうな表情をしているように見えました。しかし、実際に本編を見てみると、年頃の少女らしく可愛らしかったです。

築150年の家の中や近所を探検したり、ワイビーと喧嘩したり、ややお転婆ではありますが、普通の女の子。そんな彼女が最後は勇敢に魔女と対決し、日常を取り戻すべく戦います。

ストップモーションアニメの魅力

舞台装置のデザインや人形の動きが細やかに作られており、眺めているだけでも楽しい作品です。造形に注目すると、素材の質感などが見て取れるのがよいですね。

ストップモーションアニメは、CGと違って動きがなめらかすぎず、そこに味があって好きです。また本作においては、適度にホラー感を増す演出としても機能しています。

いざダークファンタジーの世界へ

オープニングの人形作りのシーンから作品に引き込まれますね。人形アニメの中に人形が登場するので、少し不思議な感じです。

コララインが初めて扉を通って別世界へ行く場面は、『鏡の国のアリス』を連想しました。『鏡の国』もいろいろなことが現実世界とは正反対になりますしね。

現実世界では忙しくてコララインに構ってくれなかった両親。マイペースすぎて会話がかみ合わない近所の住人たち。しかし、別世界の彼らはそろってコララインをもてなしてくれます。

家にも面白いギミックがいっぱい。食卓では汽車が走り、庭ではパパがカマキリ型のマシンに乗ってお花の手入れをしています。マーチングバンドのようにおそろいの衣装を着たトビネズミや、エイプリルとミリアムの舞台の裏方を担当するわんちゃんたちもかわいいです。

けれども楽しいことばかりではありません。ずっとこの世界にいる交換条件は、目をボタンにすること。これをコララインが拒絶すると、世界は大きくゆがみを見せ始め……。

魔女の手口

ピンクパレスでは、過去にも子どもが失踪していました。
スパイを送り込み、日常生活における不満を調べだし、そこに付け入るというのがボタンの魔女のやり口。結果、命を含めてすべてを奪うのですから、なんともいやらしいですね。コララインが身につけているのがトンボの髪飾りで、待ち構えているのはクモのような魔女というのも、罠にはめるイメージそのままです。

コララインは魔女の性格を利用し、ゲームをしかけます。はたしてその行方は……? 「別のワイビー」たちは最後までいい人でしたね。 黒猫の渋い活躍にも注目です。

おわりに

随所にみられるホラーテイストの要素については、人によってはかなり怖いと感じるかもしれません。最後の庭の形に気づいたときは、私もどきりとしました。それでも、怖いもの見たさの心理が勝ります。

インタビューを拝見すると、セリック監督は、本物の人形を使うことで得られる存在感にこだわりがあるようです。CG全盛期にあえてストップモーションアニメを作る、監督のそのこだわりが全編にわたって発揮されていると感じられる作品でした。