佐藤さとる『宇宙からきたかんづめ』

児童文学・絵本
記事内に広告が含まれています。

あらすじ

スーパーマーケットでぼくが見つけたのは、おしゃべりをするヘンなかんづめだった。そのかんづめは、遠い宇宙からやってきて、地球の調査をしているのだそうだ。ぼくはかんづめを家に連れ帰り、地球での体験談を聞かせてもらうことにした。

『コロボックル物語』シリーズの作者によるSF童話。

内容紹介と感想

「ぼく」が偶然見つけたおかしなかんづめ。一見すると普通のかんづめですが、中は宇宙人の休憩所なんだそうです。かんづめがおしゃべりする、しかも宇宙人である、という設定からしてユーモラスですね。

少しえらそうな態度のかんづめは、5つの不思議なエピソードを話してくれます。

タイムマシンは川に落ちた

長年研究を続けた末、73歳にしてついにタイムマシンを完成させたフジタ博士。果物のモモによく似たタイムマシンに乗り込み、博士は数百年前の過去に向かうのだが……。

第1話からなかなかにインパクトのあるストーリーです。「ぼく」同様、かんづめにからかわれているのか、でもひょっとしたら……なんて考えてしまいます。

タツオの戸だな

かんづめが地球に来た方法と、しゃべる犬の人形のつながりとは?

タツオくんにしてみると、何が何やらといった感じでしょうね。あなたの身の回りの不思議な現象にも宇宙人が関わっている……かも?

いなくなったどろぼう

懐中電灯を改造し、ものを小さくするマシンを発明した男。3、4時間経つと自動的に元のサイズに戻るので、運搬に便利である。このマシンを利用し、男はデパートでどろぼうをしようと企てるのだが……。

自業自得ですが、なんとも間抜けなオチ。悪いことはしちゃだめですね。

おしゃべりなカビ

マユミが算数の宿題をしようとすると、だれかが先に答えを書いている。それも風変わりな緑色のえんぴつを使って。その正体は?

なんとも優秀なカビですね。こんなふうに苦手な宿題の手助けをしてもらえたら、と思う人は多いはず。しかし最後は……。

とんがりぼうしの高い塔

旅人は、とんがりぼうし型の塔にのぼってみようと挑戦を試みた。塔のらせん階段を上へ上へと進む。塔の形状からすると、ひとまわりするのにかかる時間は徐々に短くなっていくはずだ。それなのに、いつまで経っても1周あたり5分のまま。旅人は疑問を抱き始め……。

「ぼく」が宇宙の果てについてかんづめに尋ねた際、語られたエピソード。子どもの時に読んで以来、ずっと忘れられずにいる話です。旅人が真実に気づく場面は、当時相当恐ろしく感じたものでした。

そしてエピローグ、かんづめの中が気になる「ぼく」はついに……。

おわりに

かんづめが語る話はどれも愉快ですが、含蓄がある部分もあります。楽しいSF童話というだけでなく、そういうひねりの効いたところが本書の面白さであると思います。