『ファウンデーション』などのSF作品で知られるアイザック・アシモフ(アジモフ)。『われはロボット』『鋼鉄都市』など、ミステリー要素のあるSF以外に、一般的なミステリーも手がけています。
『黒後家蜘蛛の会』シリーズ
化学者や作家といった多彩な職業のメンバーからなる「黒後家蜘蛛の会」。今日もゲストを交えて談笑していますが、いつのまにやら推理合戦の様相に。しかし、最後に謎を解くのは決まって給仕のヘンリーで……。
日本語版は創元推理文庫より5冊刊行されています。今年に入って新版が発売中。
短編集ですので、読む順番はあまり気にしなくてもよいのですが、メンバーに関する情報を得るという点では1巻目は最初に手に取るべきでしょう。
何よりヘンリーの人となりを知るうえで1話目の「会心の笑い」をまず読んでほしいと思います。ただの品の良い給仕のおじいさんではなく、一筋縄ではいかない人物であることがよくわかるエピソードです。
ちなみに、東川篤哉氏の『謎解きはディナーのあとで』は、この作品に影響を受けているんだとか。
『ユニオン・クラブ綺談』
昔スパイ活動に携わっていたというグリズウォルド老。当時のエピソードをメンバーに語って聞かせます。聞かされる側は、眉唾物と思いつつもついつい話に引き込まれてしまい……。
各話が出題偏とシンプルな解答編とにきれいに分かれた構成となっている短編集(全1巻)。『黒後家蜘蛛の会』シリーズ同様、ウィットとユーモアに満ちた作品です。グリズウォルドはなかなか癖があるおじいさんですが、こちらはこちらで好きです。
『象牙の塔の殺人』
実験室で学生が亡くなる事件が発生。容疑をかけられた大学教員の主人公は、味方がいない状況で窮地に陥ります。なんとか濡れ衣を晴らそうと自ら調査に乗り出しますが……。
大学社会の閉鎖的でブラックな一面を描いた長編。タイトルに使われている「象牙の塔」は、現実離れした研究生活などを揶揄した表現です。アシモフ自身、大学に身を置いていたので、いろいろ思うところがあったんでしょうね……。
まとめ
やはり人気なのは、シリーズ化されている『黒後家蜘蛛の会』ですね。短編集なので手を出しやすく、メンバーも個性的で読んでいて楽しいです。着眼点が独特なのは、SF作家ならではでしょうか。
アシモフのSF作品しか読んだことがなかった方、あるいはそもそもアシモフの作品を読んだことがない方、どちらにもおすすめです。