クトゥルフ神話ができるまで
創始者ラヴクラフト
- クトゥルフ神話の創始者にあたるのがアメリカの怪奇小説作家ハワード・フィリップス・ラヴクラフト(1890~1937)です。
- 創作神話『ペガーナの神々』で知られる幻想文学の大家ロード・ダンセイニのほか、先述のエドガー・アラン・ポオや『ウェンディゴ』のアルジャーノン・ブラックウッド、『パンの大神』のアーサー・マッケンといった怪奇小説作家の影響がラヴクラフト作品には見られます。
- ラヴクラフトは『クトゥルフの呼び声』(原題:The Call of Cthulhu/創元推理文庫『ラヴクラフト全集2』、新潮文庫『インスマスの影』等に収録)をはじめとする一連の作品世界を作り上げました。SF的色彩を伴う神話生物が登場し、著者自身が「宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)」と称する内容を含むのが特徴です。
- ラヴクラフトと作家仲間は、オリジナルのキャラクターや地名等を互いに貸し借りし小説を書く、一種のサークル活動をしていました。メンバーは、ロバート・E・ハワード(「英雄コナン」シリーズで有名)、クラーク・アシュトン・スミス、オーガスト・ダーレスなどです。ラヴクラフトは交流を通して話を膨らませていきました。
アーカム・ハウスの設立とクトゥルフ神話の体系化
- 生前ラヴクラフト作品は不遇な扱いを受けていましたが、のちに再評価されるようになりました。
- これには、ダーレスらが1939年に設立した出版社アーカム・ハウスの存在が一役買っています(「アーカム」はラヴクラフト作品に登場する架空の都市の名前)。アーカム・ハウスはラヴクラフトの小説を管理し、その普及に取り組みました。
- ダーレスやリン・カーターらは、ラヴクラフトの残した作品・書簡等をまとめ、「クトゥルフ神話」として体系化することに寄与しました。
- ダーレスは自らクトゥルフ神話系の作品を書くだけでなく、後進作家たちの育成も行いました。クトゥルフ神話の書き手たちは比較的自由に作品づくりをしており、自身の解釈や新要素を付加するなどしていたようです。
- こうした活動の甲斐あって、クトゥルフ神話は熱心なファンを獲得していきました。ちなみに、国内でいち早くラヴクラフト作品に注目していた作家には江戸川乱歩がいます。
TRPG発売
- 1981年には、アメリカのケイオシアム社がクトゥルフ神話をベースにしたTRPG『クトゥルフの呼び声』(Call of Cthulhu/略称はCoC)を製作。バージョンアップを重ねながら現在も流通しているロングセラー商品で、日本では途中の版から『クトゥルフ神話TRPG』『新クトゥルフ神話TRPG』と改題されています。
- TRPG(テーブルトークRPG)とは、キャラクターになりきり他のプレイヤーとの対話を通してストーリーを進めていくタイプのゲームのこと。細かいルールはTRPGごとに異なりますが、クトゥルフ神話をモチーフにしている場合は「正気度ポイント」(Sanity Point)があるのが特徴だそう。ラヴクラフト作品らしさを色濃く反映している点です。
- ゲームで加わった独自設定も、その後の各種創作に影響を及ぼすことになりました。
- 小説・漫画・アニメ・ゲームなど、クトゥルフ神話の世界観を用いて生まれた作品は数知れず。TRPGに関して言えば、昨今はオンラインセッション(ネット経由でTRPGをすること)が盛り上がりを見せているなど、新しい形でクトゥルフ神話に触れる人が増えています。
おわりに
以前の私がクトゥルフ神話に対して持っていた漠然としたイメージは「フリー素材(?)の神話風作品」「なんかタコとかイカみたいなモンスターが出てくる話」というもの。
恥ずかしながら「ラヴクラフト本人が最初からシェアード・ワールドにすると決めた上で体系化された設定を作った」ものと勘違いしていました。はじまりは小規模な仲間内でのお遊びだったのですね。
ここまでクトゥルフ神話が世に波及するとは、ラヴクラフトも想像だにしなかったことでしょう。生き物のように姿を変え成長していくその様は、まさに現代の神話と呼ぶのにふさわしいかもしれません。







