小泉吉宏『ブッタとシッタカブッタ』シリーズ

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『ブッタとシッタカブッタ』シリーズは、「心」をテーマにしたロングセラーコミック。『愛のシッタカブッタ』や『ブタのいどころ』など、関連シリーズも刊行されています。

ここでは、シッタカブッタの恋を中心にした心の旅を描く1作目と、多くの悩めるブタたちが登場する2作目をご紹介します。

『ブッタとシッタカブッタ1 こたえはボクにある』

「こんなに愛しているのに……」
ごく普通のブタ、シッタカブッタは、イイコブッタちゃんに恋をしています。彼女好みの男に見られたい、電話をかけようかどうしようか、彼女が「疲れた」と言ったのはボクが原因なのか、悩みに悩む毎日です。

そしてある時、二匹の間に急に溝が生まれてしまいます。それは彼女の方が変わったから?

決めつけ、言い訳、ゆがんだものの見方、理想的な自我、自意識過剰。そこには、どこにでもいるブタの姿が描かれています。

「こんなに愛してる」って言ってるのは愛してるって言いたいんじゃなくて「愛してくれよ!」って言ってるんだ!

…考えてみたら「こんなに好きなのに!」って言っても目の前のフルーツパフェが倍になるわけでもないもんな

ゆるいようで深い、深いようでゆるい、シッタカブッタの心の成長になるほどと納得したり笑ったりしてしまいます。

幸福があるから不幸があるし、不幸があるから幸福がある。水戸黄門の歌ではありませんが、「人生楽ありゃ苦もあるさ」といつの間にか気持ちがほぐれてゆきます。

『ブッタとシッタカブッタ2 そのまんまでいいよ』

「自分って何なのさ?」
お話の最初に登場するのはロボットのブタ、ロブッタ。ロブッタは博士に「私」を入れられたことで、怒りや悲しみを覚えます。経験で育ち、刻々と変化する「心」は、自分のもののはずなのに実に不思議です。

続いて人付き合いや思い込みによって悩むブタたちに関する話が続きます。
自分を明るい性格・かっこいい・すごいと思われたいブタ、価値観や理想、責任を押し付けるブタ、傷つくのが怖いブタ、道がひとつしかないと思い込んでいるブタ。彼らは、自分を大事にするあまり逆に自分を苦しめていますし、おかしな心のクセを持っています。

「可愛いコでいることや好かれたいと思うことや幸せに思われたいことに疲れちゃった…他人がわたしを好きになってもわたしはわたしがキライ!!」

「のどがかわいたら水を飲むでしょ! あんたは今〈自分自身〉が必要になったんだよ」

昨今のSNS疲れにおいても、上の女の子ブタのような考えを持っている人は多いのではないかと思います。日々の生活では、そのまんまの「ただの自分」が忘れられがちですよね。

おわりに

心の運転の仕方のコツについて、気づきを得られる本書。心理学的な要素が含まれていますが、可愛らしい絵柄の4コマ漫画形式の作品ですので、お子さんでも読みやすいと思います。

余談ですが、登場キャラクターの中ではカイカブッタがわりと好きです。性格が悪い面も見られますが、どこか憎めないというか。1作目のあとがきに「愚か者と賢者の間」という言葉がありますが、シッタカブッタ同様、悩んだり欠点があったりするところも含めて「自分」なんだと感じさせてくれます。