『インサイド・ヘッド』(原題:INSIDE OUT)は、2015年公開のピクサー映画。ひとりの女の子の成長と、その頭の中の出来事を情感豊かに描いています。
吹替版の声優は、ヨロコビ役に竹内結子氏、カナシミ役に大竹しのぶ氏、ビンボン役に佐藤二朗氏など。また、吹替版主題歌「愛しのライリー」は、DREAMS COME TRUEが担当しています。
なお、原題INSIDE OUTの意味は「裏返し」。turn ~ inside out で「~に大きな変化を引き起こす」という意味もあり、こちらも踏まえてつけられたタイトルなのでしょうか。
あらすじ
少女ライリーの頭の中いる5つの感情、ヨロコビ(Joy)、カナシミ(Sadness)、ビビリ(Fear)、イカリ(Anger)、ムカムカ(Disgust)。彼らはライリーの幸せを願い、感情の司令塔で日々活動をしている。
元来明るく元気いっぱいのライリーであるが、父親の仕事のため、自然豊かなミネソタから都会へ引っ越してきたことで精神的に不安定になってしまう。
一方頭の中では、ヨロコビとカナシミが司令塔の外に出てしまうという大事件が発生していた。
内容紹介と感想
不思議な頭の中の世界
頭の中の世界が実にユニークに映像化されています。
感情の司令塔以外にも、特別な思い出をベースにしてできる島、セットを作って撮影されている夢、なぜかしつこく思い出されるCMソング、量産型仮想ボーイフレンドなど、着眼点が愉快な表現の数々も見どころです。
一方で、ライリーの成長に伴い忘れられつつあるイマジナリーフレンド、ビンボンの存在には切なくなってしまいます。
5つの感情
司令塔のメンバーを一見すると、マイナスな感情が多いようにも思えます。
しかし、ビビリによって身の安全が守られたり、イカリがスポーツにおける闘争心や決断力として働いたりしますので、彼らは状況に応じてプラスの感情にもなるのです。
ただしカナシミだけは、ヨロコビにとって不可解な存在でした。彼女はライリーを悲しませて苦しめるばかりで、何の役に立つというのか?
ライリーを思ってのこととはいえ、カナシミをのけ者にするなど、前半のヨロコビには独善的な面が散見されます。もちろん後々成長するのですが、視聴前は単純に明るくてよい子をイメージしていましたので、このヨロコビのキャラクター造形は意外に感じました。
カナシミの重要性
落ち込むビンボンに寄り添い、話を聞いてあげるカナシミ。ビンボンはひとしきり涙をこぼした後、元気を取り戻します。その様子を見てびっくりするヨロコビ。
明確にカナシミの役割が描かれたのはこの箇所ですが、それ以前もヒントとなる場面はいくつかありました。いち早くライリーの異変を察知したママの感情のリーダーがカナシミだったのも、上記のビンボンのエピソードなどを考えると納得がいきます。
再び5つの感情
ヨロコビがリーダー格なだけあって、もともと明るく前向きな性格のライリー。しかしそれゆえに、現在とても不安で、ミネソタに帰りたいという気持ちを両親に吐き出せずにいました。
残されたメンバーだけではうまく感情を制御できず、どんどん感情が欠落していき、うつのような状態になってしまいます。
彼女の心が崩壊寸前というところで、ビンボンの助けもあって、ヨロコビとカナシミはようやく司令塔に戻ることができました。ここでカナシミが前面に出ることによってライリーの心は救われました。
ヨロコビばかり指揮を執っていると、常時ポジティブにふるまわなくてはいけないわけで、そういうのってひどく疲れますもんね。時としてカナシミを受け入れることが心の支えになってくれます。
ライリーが成長するにつれ発展していく感情の司令塔。5つの感情たちの結束は以前よりも強まりましたが、これからはライリーもお年頃で、なかなかたいへんそうです。
おわりに
自分の感情のリーダー・サブリーダーは誰だろうか、などと考えてみるのも楽しいと思います。ライリーパパのリーダーはイカリですが、ビビリの発言も多いのが、怒れる父親の複雑な心境を表しているようで面白いところです。
最後の方にはさまざまな人物、犬や猫の司令塔の様子も登場。これだけでいくらでも話が広げられそうです。
いろいろな感情がわくとき、この映画のように自分の中で感情たちが奮闘してくれているところを想像すると、なんだか気持ちが慰められますね。
なお、2024年に公開される続編には新たな感情も登場するとのこと。どのような活躍を見せてくれるのか、期待に胸が膨らみます。