ヒッチコック監督映画『裏窓』ほか

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今回はヒッチコック監督作品『裏窓』を中心に、ノーラン監督の『メメント』『プレステージ』、往年の名作『スティング』と、ラストまで展開に目を離すことのできない映画をご紹介します。

『裏窓』―見えるもの、見えないもの

あらすじ

事故に遭い、部屋で療養を強いられているカメラマンのジェフ。暇をもてあまして、今日も今日とて向かいのアパートの住人たちを観察している。すると、その中の一室で何やら犯罪のにおいが……?

スタッフ・キャストについて

本作は、『サイコ』や『鳥』を世に送り出した「サスペンスの神」、ヒッチコック監督の代表作のひとつ。『幻の女』で知られるウィリアム・アイリッシュ(別名義コーネル・ウールリッチ)の短編小説を原作とするサスペンス映画です。

主人公の恋人リザ役は、のちのモナコ公妃、グレース・ケリー。本作での上品で美しいたたずまいは、一枚の絵を見ているかのようでした。その人生は、『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』(原題:Grace of Monaco)というタイトルで2014年に映画化もされています。

内容紹介と感想

最初のうちは、重大事件が起きているというジェフの主張を一笑に付すリザと看護師のステラ。しかし、怪しい場面を直に目にしたことで態度が一変します。

ここからノリノリで探偵ごっこに興じる女性陣二人がなんともおかしいのです。『裏窓』は緩急のある作品構造が秀逸で、全体的にスリリングでありながらも、こうしたコメディ要素が随所に見られます。

またメインストーリー以外にも、アパートの別室でドラマが進行しているのが面白いところです。新婚夫婦の関係が冷めたものになったり、孤独な女性の人生が大きな転機を迎えたり……。

画面に映る範囲が限られているので、舞台劇の様相を呈しており、そこがまた想像をかき立てます。他者の電話での会話は、内容が半分しか聞こえないため、流れの予測が立てられずやきもきするそうですが、それと似ているかもしれません。

けがをしていて主人公の活動が制限されているのも、最後まで見る者に緊張感を与えます。このような舞台設定のうまさが、名作の名作たるゆえんであると感じさせてくれますね。

『メメント』―物語は終わりから始まりへ

あらすじ

主人公レナードは、10分しか記憶を保つことのできない前向性健忘の男。妻を襲った犯人を捜し続けている。

必要なことはポラロイド写真に撮ってメモを書き込む。さらに重要事項は自らの身体にタトゥーとして刻む。それでも混沌としていく状況。はたして真実はどこに……。   

内容紹介と感想

監督は、『インセプション』『インターステラ―』のクリストファー・ノーラン氏。mementoは「記憶」、ラテン語で「思い出せ」「忘れるな」などの意味です。パッケージでは、全身に入れ墨を入れた主人公が強烈な存在感を放っています。

本作最大の特徴は、冒頭で時系列の最後にあたる部分が描かれ、そこから時間をさかのぼっていくという点。この手法により、「どうして今こんなことになっているんだ?」「俺と話しているこいつは誰だ?」と混乱する主人公同様の気分を視聴者も味わうことになります。

冒頭でいきなり亡くなる協力者テディは、本当に真犯人なのか、実はいい人なのか。それ以外の登場人物も信用できるのか、などと悩むはめに。

同じ前向性健忘の男をレナードは反面教師にしているようなのですが、時折はさまれるこの「サミー」のエピソードはとても不気味です。

自分のメモに対して妙に自信を持っているレナード。しかし、周囲は彼の症状を利用する人間ばかり。そして結局のところ、主人公自身も例外ではなく……。後味の悪さが尾を引きます。

『プレステージ』―奇術師たちのドラマ

あらすじ

19世紀末、ロンドン。若きマジシャンたちがライバルとして激しい攻防を繰り広げていた。演出力に優れる「グレート・ダントン」アンジャーと、発想力に優れる「プロフェッサー」ボーデンである。

アンジャーは、妻が亡くなった脱出マジックの失敗の原因がボーデンにあると考え、以来彼を憎むようになっていた。

時は流れ、アンジャーがこの世を去った。水槽からの脱出マジック中におぼれたのだ。そして、ちょうど目の前にいたボーデンは容疑者として逮捕されることに……。

内容紹介と感想

こちらもノーラン監督作品です。

マジックのために日常生活を犠牲にしている老奇術師を見て、ボーデンが感嘆する場面があり、ここに彼の考え方がよく表れています。アンジャーとボーデンが生涯をマジックに捧げているさまは、偏執的といえるほどです。

そして、その行為がいかに尋常ならざるものであったかを、終盤の種明かしで観客は思い知ることになります。

なお、原作はクリストファー・プリーストの『奇術師』。世界幻想文学大賞を受賞しています。そう、ファンタジー要素がある作品なのです。これを知らず普通のサスペンス映画のつもりで見た場合、種明かし部分に不満を持つ可能性もありますので、ご注意ください。

『スティング』―詐欺師による復讐劇!

あらすじ

1930年代、アメリカ。詐欺師のフッカーとルーサーは、そうとは知らず大物ギャング・ロネガンの金に手を出してしまった。見せしめのため、命を奪われるルーサー。その復讐を果たすべく、フッカーは伝説の詐欺師ゴンドーフに協力を仰ぐ。

内容紹介と感想

1973年にアカデミー賞作品賞ほか、計7部門を受賞した傑作映画。一般的に「刺すこと」などを指す単語stingですが、俗語では「大金を奪う詐欺」「おとり捜査による逮捕」を意味するとのこと。

ゴンドーフ役は名優ポール・ニューマンです。フッカーと出会った当初は、かつて大物詐欺師としてならしたとは思えない生活ぶりのゴンドーフ。しかし、やる気を出した後タキシードで決めるシーンはさすがにかっこいい。

報復は、暴力などではなく、詐欺師らしく金銭的損害を与えるという方法をとります。それも偽の賭博場まで設けるというのですから、大がかりです。

発端の事件は重いものではありますが、締めは非常に痛快。インチキ賭博場の解散がさらりとした感じなのもよいですね。さっぱりとした気分で見終わることができます。

おわりに

当たり前の話ではありますが、私たちは目に見える範囲のものしか知覚できません。しかし、見えない部分では何が起きているのか? 上記の映画を見たときなどには、そうした物事の裏面に思いをはせる瞬間が訪れます。