『PUI PUI モルカー』

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概要

大人も子どもも楽しめる!

『PUI PUI モルカー』は、モルモットが車になった世界を舞台とするテレビアニメ。2021年1月から3月にかけて、フレーベル館提供の子ども向けバラエティ番組「きんだーてれび」内の1コーナーで初放送されました。

監督は、『マイリトルゴースト』(2018年)で国内外の賞を受賞し高く評価された、新進気鋭のクリエイター見里朝希(みさとともき)氏です。

放送されるやいなや、本来のターゲット層を越え、ネットを中心に幅広い世代で話題になった本作。これに関しては、内容が優れているのはもちろんですが、放映後1週間YouTubeで無料視聴できた点や、1話あたり2分40秒という気軽に見られる長さであった点が大きかったのではないかと思われます。

また、作中では具体的な台詞が登場しないので、小さいお子さんだけでなく、日本語のわからない海外の方でもすぐに楽しめるという利点も。国内とほぼ同時に台湾(『天竺鼠車車』のタイトルで放送)でブームになったのも納得がいきますね。

加えて、1話ごとに趣向が異なるオムニバス形式であるため、そのバリエーションに富んだ物語が視聴者を飽きさせません。多数の小ネタが含まれており、とりわけ映画ファンにとっては面白い発見があるのも特徴で、繰り返し見て確認したくなってしまいます。

しかしながら、本作の一番の魅力は、やはり何といってもモルカーたちの愛くるしさでしょう。

可愛いパペットアニメ

本作はストップモーションアニメに分類されます。

監督の大学院時代の指導教官でもある伊藤有壱(いとうゆういち)氏が手がけている『ニャッキ!』もストップモーションアニメですし、監督が強く影響を受けた作品のひとつとして挙げている映画『コララインとボタンの魔女』もそうですね。

ストップモーションアニメに使われる素材としては、粘土や砂、各種人形など、さまざまなものがありますが、本作の場合は羊毛フェルトが中心となっています。それがまた、もこもこ柔らかそうなモルカーたちのイメージにぴったりなのです。

『公式 PUI PUI モルカー図鑑』や公式サイトの「MOLCAR STAND」でモルカーたちがずらりと並んでいるのを見ると、それぞれ顔立ちが違うのがよくわかります。こういうところは手作りならではの良さですよね。

他方で、車内の描写など一部に実写を取り入れているというのも、独特の味わいを生んで面白いところ。

配信サイトについて

本作はAmazon Prime Video、Netflixなど、多くの動画サイトで視聴することが可能です。

配信サイト一覧については、公式サイトの「STREAMING」でチェックすることができますので、そちらをご覧ください。

メインキャラクター

ポテト(♂)
のんびりした性格のモルカー。しかし、ここぞというときは勇敢さを見せる主人公気質。ドライバーは黒いスーツを着たお姉さん。

シロモ(♂)
特に臆病なモルカー。トラブルに巻き込まれやすいタイプ。テディを姉御のように慕っている。ドライバーは優しいお兄さん。

アビー(♂)
初心者マークをつけたモルカー。真面目でプライドが高い。苦手なネコと何かと縁がある。ドライバーはオタクくんとお母さん、お父さん(第5話に登場したレーサー)。

チョコ(♀)
運動神経抜群のモルカー。おしゃれ好きな女の子で、夢はNo1の高級モルカーになること。ドライバーは現時点では不明。
【追記】2022年8月、公式Twitterでドライバーが明らかにされました。

テディ(♀)
食いしん坊でおてんばなモルカー。良くも悪くも行動力があり、トラブルメーカーになりがち。ドライバーはマナーが悪いお兄さん。

内容紹介と感想

渋滞はだれのせい?

大渋滞に巻き込まれたポテトとお姉さん。先頭にいるDJモルカーのドライバーはスマホに夢中で、青信号に変わっていることに気づいていません。そこへ急患を乗せた救急モルカーがやって来て……。

最終話まで見終わった後に振り返ると、「あのモルカーも、こんなところにいたんだ!」とわかって楽しい第1話。

モルカーと現実の車との大きな違いは、モルカーには意思があるということ。そのため、ドライバーにしてみれば予想外の行動に出ることもあるのです。今回は、ポテトの果敢な行為によって救急モルカーが無事病院へ向かうことができました。

渋滞の解消方法は、モルカーだからこそ許されるものでしたね。モルカーの足はタイヤ型ですが、回転するのではなくバタバタ走るのがモルモットらしさを残していて好きです。

迷惑ドライバーを逮捕したパトモルカーたちは、全員同じカラーリングで黄色い体に赤い目が印象的。働くモルカーは、現実世界で警察犬といえばシェパード、といった具合に特定の品種が採用されているのでしょうか? あるいは第10話のアビーのように特殊なスプレーで塗装しているとか? もし救急モルカーになるための訓練や試験があるなら、難関なのでしょうね。

なお、DJモルカーのドライバー役は監督ご本人、ポテトのドライバー役は監督の実姉である見里瑞穂(みさとみずほ)さんだそうです。

銀行強盗をつかまえろ!

お兄さんと買い物にやって来たシロモ。大好物のレタスを食べながら、お店の前でお兄さんを待っていると、隣の銀行で強盗事件が……!?

銀行強盗登場からカーチェイスまでのテンポがよい第2話。いつの間にかシロモのレタスが消失していますが、強盗に脅迫された後に何だかんだ食べ切ったのでしょうか。

どんなに急いでいても律義にシートベルトを締める強盗たちの姿が非常にシュールです。でも、第1話のお姉さんの様子を思い出すと、シートベルトをしていない場合は車内で転げまわるはめになりそうではあります。悪者であっても、そこは安全第一ということで。

最後はシロモの機転のおかげで強盗の隠れ家が発覚し、めでたく逮捕。災難な一日ではありましたが、シロモは元のお店の前に戻ることができました(このとき、パトモルカーがちゃんと付き添ってくれている描写が細かいですね)。

その後、何事もなかったかのようにお兄さんと合流するシロモですが、夕日を浴びて輝く勲章がとても誇らしげ。がんばったシロモに乾杯!

ネコ救出大作戦

今日は猛暑。レストランの駐車場にいるモルカーたちも汗だくです。そんな中、どこからともなくネコの鳴き声が……。

レストランMolsanのパフェがやたらとおいしそうな第3話。

シロモだけ屋根付きの日陰に停められていたので「おや?」と思ったのですが、これはドライバーの気遣いによるもののようですね。前回もおやつのレタスを用意してくれるなど、さりげない演出からお兄さんの優しさが伝わってきます。

さて今回のストーリーは、ペットが車内に放置され熱中症の危険にさらされる、という現実にもありそうな展開。しかし、当のアビーがネコの存在を認識していなかったことからすると、ドライバーであるお母さんも気づかないうちに勝手にネコが入り込んでしまっていたのでしょう。

様子を確認するために車内に目を移動させるアビー。ここで私は「モルカーの身体構造について深く考えるのはやめよう・・・」と思いました。

ちなみに、アビーのモデルはアビシニアンモルモットのようです。ということは、あの頭の造形は巻き毛やつむじをイメージしてのものなのでしょうが、個人的にはどうしても肉まんを連想してしまいます。

むしゃむしゃおそうじ

ドライバーがポイ捨てしたお菓子の袋を食べてしまうテディ。その反応を見て調子づいたドライバーは、どんどんゴミを道路に投げ捨てていきますが……。

テディがお腹を壊してしまう第4話。公衆トイレにモルカー用トイレも併設されているあたり、この世界におけるモルカーの浸透ぶりがよくわりかりますね。

テディが強引に道路に出ると、あきれた様子で走り去っていくヒマラヤン。この4話くらいまでは「これ以降も迷惑運転などのマナー違反をストーリーの主軸に据えていくのだろうな」と思っていました。今回のドライバーは因果応報を体現していましたし。

しかし、その予測は大きく外れました。
第6話や第8話のテディの暴れっぷりを目にした後だと「これぐらい大ざっぱな性格のドライバーの方が、テディと相性がいいのかもしれない」という見方に変わってくる不思議。もちろん、ポイ捨てや動物に変なものを食べさせるのは駄目ですけどね。

プイプイレーシング

モルカーレース開催! アビーは秘密兵器まで用意して大はりきりですが、レースの行方ははたして……?

気の抜けたスタート合図音がツボにはまって仕方ない第5話。前半のレースの勢いと、アビーがにんじん争奪戦に負けた後の哀愁漂う雰囲気の緩急が絶妙です。

スタートダッシュを決める身体能力が高いチョコ、段差で急停止してしまう慎重派のシロモ、ブーストにんじん(マリオカートのパロディ?)目がけて突進するテディなど、レースを通してメインキャラクター5名の個性が存分に発揮されていました。

映画好きのスタッフのエンジンがかかってきた感じがするのも、このあたりからでしょうか。背景にはどこかで見たようなポスターも……。

ゾンビとランチ

なぜか荒野でゾンビの集団に追いかけられているテディとシロモ。武装したテディが反撃に出ます。そこにハンバーガーモルカーが偶然通りかかり……。

『マッドマックス』のような重装備で固めたテディに危険な匂いを感じる第6話。シロモから「姉御」扱いされているだけのことはあります。

巨大ハンバーガーをめぐってゾンビと抗争になるものの、親切なハンバーガーモルカーが仲裁に入ることに。そのまま仲良く分け合って、めでたしめでたし……かと思いきや、ゾンビがハンバーグと間違えてシロモをかじってしまいます。すると、シロモまでゾンビに変身! 

ゾンビシロモから逃げるときもレタスをちゃっかり持っていくテディ。これほどまでに食い意地が張っていると、いっそ清々しい。

なお、ゾンビシロモについては、「MOLCAR STAND」等の説明によると「本人はあまり気にしていない」とのこと。その後も普通に街中を走っているため、大きな変化は肉食になったことくらいのようです。のんびりした平和な世界なんですね。

どっきり? スッキリ!

インディ・ジョーンズ並の大冒険を繰り広げてきたトレジャーモルカー。その体は泥だらけ。そこでポテトたちはトレジャーモルカーを洗車場まで連れて行きますが……。

トレジャーモルカーをきれいにするべく、ポテト・チョコ・テンテンが奮闘する第7話。タイトルカードの地図に描かれている島がにんじん型なのが、芸が細かい。

チョコは宝の地図を見て何かひらめいた様子。モルカーたちの意図をくんで協力してくれた洗車場のお姉さんも、いい味を出しています。

作戦は見事に大成功。
ピカピカになったトレジャーモルカーを見て、まぶしさのあまり目を細めるポテトたち。このとき出現する下まぶたは、国内アニメでは馴染みが薄いですが、海外のカートゥーンアニメではよく見られる表現ですね。

モルミッション

悪の組織に捕まったトレジャーモルカー(黄金)を救出に向かったテディとチョコ。何とか敵のアジトから脱出したものの、今度は空飛ぶ機械メカシャークが追いかけてきて……。

ダイナミックな構図がたまらない、アクション巨編の第8話。『ミッション:インポッシブル』ならぬモルミッションです。

今回はテディ&チョコの女の子コンビが大活躍します。どちらもたくましいですが、次の話でも華麗な滑りを披露したりするなど、チョコはスマートなアスリート型という印象。テディに関しては、大味なパワー特化型というか、とにかくいろいろと突き抜けている感じがします。

テディが横滑りするシーンは、これまた『AKIRA』のオマージュ。
続くミサイル発射時の表情も凛々しくかっこいいテディですが、肝心のミサイルの出てくる場所が……。ポストモルカーの設定といい、モルカー的にはあれが標準仕様なのでしょうか。

ストーリー後半は、サメ映画ではお約束の展開。他の回もそうなのですが、一時停止やスローで見ると煙や炎などにも綿が使われていることがよくわかり、その繊細な表現力に驚かされます。

すべってサプライズ

雪が降ってつるつるの路上で、恋人にプロポーズを試みる男性。DJモルカーの流す音楽に合わせ、行き交うモルカーたちも見事なスケーティングで応援!?

プロポーズ成功後の指輪の演出が何ともおしゃれな第9話。ミュージカルのようににぎやかなお話です。

途中、『ラ・ラ・ランド』風のダンスを披露するカップル。ここで審査員役として寿司モルカー(海老)、タイムモルカー、コロッケが登場します。わざわざメガネまでかけているコロッケは、ひょっとして形から入るタイプ?

終盤にカップルを迎えに来るウェディングモルカーは、ぱっと見は可憐なお嬢さんといった感じですが、「間違えて花を食べそうになることもある」というギャップがいいですね。本来は交通整理をしに来たんでしょうに、最後までノリノリでリズムをとっているパトモルカーもおちゃめです。

私の中でモルカーは『怪盗グルーシリーズ』のミニオンと同じ枠でして、可愛い不思議な生き物がたくさん集まってワイワイしているのを見るのが楽しくて仕方ありません。そういうわけで、本編では今回のエピソードや最終話が特にお気に入りです。

ヒーローになりたい

猛特訓の末、念願叶って初心者マークがとれたアビー。しかし、直後にオタクの手により痛車(いたしゃ)にされてしまい……。

ワクワクしているアビーとその後の落差にこちらまで悲しい気分になってしまう第10話。オタクくんに悪気はなかったんでしょうけどね。ラストシーンの様子を見ると、彼はちゃんとアビーに対して愛情を持っているようですし。

アビーの理想は、スーパーマンやバットマンのようなかっこいいヒーロー。ところが、ドライバーの好みはキュートなヒロイン『魔法天使もるみ』ちゃんでした。

痛車にされ、恥ずかしさのあまり物陰に隠れてしまうアビー。しかし、ローズたちは実際には「アビー、元気ないけどどうしたのかな?」とか「あのペイント、センスいいなあ」とか考えていた可能性だってあります。こういうときに気になる他人の目というのは、厳密には「自分が想像する他人の目」なのでしょう。

第3話もそうですが、苦手なネコでも助けたり、第5話で賞品をポテトたちに分けてあげたり、見た目はどうあれアビーの心意気はいつだってヒーローそのものですよね。

タイムモルカー

タイムモルカーに乗って氷河期の時代にやって来た博士と助手の女の子。原始人とトラブルになり、絶体絶命のピンチに陥りますが……。

モルカーのご先祖さまに神々しさを感じる第11話。ご先祖さま役は、本作で声優も務めているモルモットのつむぎちゃんです。

今回登場する博士の外見は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のドクそのもの。タイムモルカーも、デロリアンを改造した車型タイムマシンの特徴を踏襲しているようです。ただ、タイムモルカーの燃料は野菜らしいので、とてもエコフレンドリー。また、タイムモルカーのふわふわした毛並みは、ドクの愛犬アインシュタインから来ているのでしょうか。

タイムトラベラーの行動が現代に影響を及ぼす、というのも『バック・トゥ・ザ・フューチャー』と同じですね。みんなニット姿がとても似合っています。

Let’s! モルカーパーティー!

お疲れのお姉さんは、帰宅して早々眠ってしまいます。しかし、ポテトたちのお楽しみはこれから。仲間たちが勢ぞろいして、愉快なパーティーの始まりです。

眠ってしまったお姉さんをソファに運び、毛布をかけてあげる優しいポテト。実に良くできたモルカーです。

第12話はモルカー大集合。モルカーたちが普通にスマホを操作して連絡を取り合っている事実にまずびっくり。

作り込まれたアプリやスタンプのデザインはどれも秀逸です。「PUI PUI CHAT」のメッセージを見てポテトの家を訪れたモルカーたちは、ごちそうを食べたりゲームをしたり、楽しいひと時を過ごしました。

最終回だからといって仰々しいところは一切なく、そのまま第1話に戻っても問題なさそうなストーリー。モルカーたちの日常は、これからもずっと続いていくんですね。語り過ぎず、想像の余地を残している点も、本作の魅力であると思います。

おわりに

個人的に好きなメインモルカーはチョコ、脇役モルカーはポンタ、わさび、ごましおです。しかし、恥ずかしがり屋のごましおは、出演シーンを探すのがなかなか難しい。仲良しの双子テンテン・トントンや、最終話で壺に隠れる場面が印象的なジーニー(一時停止すると外見がすごいことになっているので一見の価値あり)も可愛いです。

メインキャラクターに限らず、登場するモルカーはどの子も愛嬌たっぷりで個性的。みなさんもぜひお気に入りのモルカーを見つけてください。